実験:ヨーロッパヴィンテージの蝶番は、どこまで再現できるのか。
5年ほど前。 まだ自分の手でフレームを作ったことがなかったときのことです。
鯖江でセルフレームを作ってもらおうと、とあるファクトリーにお願いにあがったところ
蝶番の設置方法についての僕らの要望を拒否されてしまったんです。
その時の要望とは、1960年代以前のイングリッシュ、フレンチのヴィンテージのように
蝶番を座彫りせずに、浮かせた状態で、ピンの頭も削り落とし。
こんな感じにしたかったのです。
蝶番がフレームに埋まっていなくて、乗っかっているのが分かりますか?
*上の写真は3本ともヴィンテージです。
強度が落ちる上に、作りにくい
こんな作り方をなぜ当時のヨーロッパのファクトリーはやり続けていたのか、不思議です。
見た目の美しさ以外に、理由が見当たりません。
かといって見た目のために、あえてやっていたとも思えません。
とにかく作りにくいんです。
だから、断られました。そもそもメリットがないよと教えられながら。
でも諦めるわけがなく、
KISSOの吉川さんから別のファクトリーを紹介してもらい
まずは蝶番を通常の普及品(洋白やチタン)ではなく、真鍮で特注しました。
ゼロから特注で金型から作ったので、約1年半も待たされましたが、完成。
2012年-2013年のことです。
そして同時に2011年ごろ、鯖江で制作用の機械を各種、買い揃えて、たとえば
NC切削機(板生地を切り出す機械)、埋め込み機(蝶番を埋め込む機械)、カシメ機(蝶番をカシメる機械)
打刻機(刻印を打つ機械)、溝掘機(レンズの内側のミゾを掘る機械)
などを手に入れて、ヴィンテージを触りながら、合間を縫って、何度も試作(プロトタイプ)を重ねていたのでした。
鯖江の「師匠」にはかなりヘルプいただきました。
すると、できましたよ。
*上の2本は僕たちが作ったフレームです。
上のイエローフレームの蝶番には、酸化しやすい真鍮の特性がうまく出て、緑錆が吹いちゃってくれています。
以上。ヨーロッパヴィンテージの蝶番は、どこまで再現できるのか。
やってみたら完全再現できました。
これがポロっと中古で出てきたら、ヴィンテージと見分けがつかない危険なフレームの誕生です。
ちなみに、僕にとって「ヴィンテージのディテールの再現」はゴールではありません。
あくまでもエクササイズです。
ヴィンテージの再現っていう行為自体、感度の高いプロジェクトでは決してないですからね。
ただ現行の製法とは全く異なる合理的でない製法をあえて自分の手を使ってトレースすることで見えてくる世界があるのです。
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