作業場の彫金台。 ここで、Solakzade Originalの金無垢フレームのプロトタイプに彫っています。
染谷の兄貴が自由が丘でやっているフィレンツェの洋彫りを見様見真似で盗みまして、それをここで毎日、黙々と体に叩き込んでってます。
洋彫りは和彫りやトライバルな彫りと異なり、押して彫ります。鏨(たがね)を右手で持ってググッと押し当てて彫っていく彫金技法です。
和彫りは引いて彫ります。鏨を槌で叩き、手前に引き彫っていく彫金技法です。
メガネに彫金をする時、最初まっすぐな輪郭線を両端に2本引いて「レール」を作り、レールの中を規則正しく彫ることで模様となり柄が出来る訳ですが、ルーペや顕微鏡でよく見ると、太い線から急激に細くなって彫ったラインの先が鋭く終わっている「三角の線」があります。
例えるなら書道の払い。
僕が彫金を始める前は、書道の払いのような線は太い線から始めて細い線で終わると思ってました。
実際は逆でした。
鋭い部分からスタートしてます。
ということは、始めは軽くあてる感覚で彫り始め、最後になるにつれて力を入れていく彫りな訳ですが、その時の刃の研ぎがとても大切です。
肉眼で刃先を見ても刃の状態の良さはあまりわかりませんが、顕微鏡で見ると違います。
この違い、分かりますでしょうか?
1枚目は研いだばかりの刃で2枚目は刃先が負けて丸くなってます。
この小さな違いは一見なにも変わらないように見えますが、実際彫ってみると天と地ほどの差があります。
刃先がより鋭利な状態なほど金属を捉え、正確なラインが引け、また彫り跡も美しいです。
丸くなった刃先だと彫り跡がガタガタで金属の上で滑るので自分でも驚くくらい違う方向へ刃先が走ります。
またその金属が14Kなどのように固いと突き抜けることも多くなり、もう片方の抑えてる手にタガネが突き刺さることもしばしば。
料理と一緒で切れない包丁を使うと怪我しますもんね。
慣れてくると刃の研ぎをこまめにやらなくなってしまいがちですが、今日改めて思ったので1彫り1彫り綺麗なラインで鋭い美しさをだせるように、刃の尖り具合を確認しながら明日からまた彫金していきたいと思います。